
第2回 Bar Dute (バー デューテ)


浅草であって、浅草的ではない。生活感のない異次元空間バー。
通称:どて通りの交差点の一角に、ガレージかな? それとも倉庫? と見間違えそうな建物があります。外壁にはスプレーによるラク書きが描かれていて、小さな看板が掲げられているだけ。ドアを開けるのに少し勇気がいりそうです。
でも、一歩店内に入ると、そこは浅草であって浅草らしくない、生活感のまるでない異次元の空間なのでした。
「バー デューテ」は、今年10周年! 高尾健太さんがこの店をオープンさせたのが21歳のころ。
いまもひとりでカウンターに立ち、オーナーバーテンダーとしてディープな夜を演出しています。
店内には、浅草を感じさせてくれるようなオブジェ、例えばお祭りの提灯やお神輿などありません。
健太さんのイデタチも、パナマ帽に白いワイシャツ、エプロンという異次元空間にふさわしいもの。和酒は置いてなく、なかでもラフロイグの様々なラベルを取り揃えています。
「浅草って、代々この町に暮らす人が多く、お祭りも多かったりして、すごく生活感がある町なんですね。でも、そういうエリアの中で生活感のない空間があってもいいんじゃないかと思ったんです。日々の暮らしの中で、いろいろなことがあるけど、このドアを開ければいつでも素の自分にかえってもらえるような、そんなバーを目指しているんです。だからクリスマスやハロウィンみたいなイベントもやらないことにしています」
朝までやっていることもあって、時間帯を追うごとに様々なお客さんが訪れます。
「へぇー、地元にはこんな人もいるんだね?って思えるくらい、普段なかなか出会えない人と出会える楽しさもあります。私自身、とても刺激になるし、毎日が楽しいですね」


アイディア満載の、ドリンク&おつまみ。チーズと和の食材との、意外なコラボも。
今回、いただいたのは「ゆずを使ったギムレット」。普通ならライムを使うところを、あえて和風の「ゆず」にアレンジしているわけですが、これがなんとぴったり合うではありませんか!
そしておつまみをオーダーしようと、黒板メニューを見ると、面白いメニュー名が並んでいます。
カマンベール+納豆とか。
シェーブル(山羊チーズ)+パクチーなんてのもある!
どんな味わいなのか、さっぱりイメージできないような、意外性のあるおつまみが並んでいるのでした。
「食材を買い付けに行くが、すごく好きなんですね。で、そういうときに、このふたつの食材をコラボすると意外と旨いんじゃないかって思ったりして。あとは、お客さんからアイディアをいただいたりしています」
と言いつつ、出てきたのが「エポワスと干し砂肝」! ブルゴーニュ地方の代表的なチーズと、丁寧に干したウィスキー漬けの砂肝とのコラボ♪ これがまた、合う! 合う!
「漬け込んだオリジナルドリンクもありますよ。ブランデーにオレンジとコーヒーを浸したものや、ウォッカにアメリカンチェリーとミントを浸したやつとかね」
アイディア満載のお酒とおつまみによる、楽しいひととき。そして何より、人なつっこいようでいながら、実は繊細に気遣いをしている健太さんの接客ぶりに感心してしまったのでした。

砂肝を吊るして燻製に。これをバーナーで炙ると、うまいつまみになるのです。酒がすすむ、すすむ。

おおっと、怪しいドリンクが。実はこれテキーラ、ローズマリー漬けなどの自家製ドリンクなのです。

吉原大門前! ガレージみたいな外観のドアを勇気を出して開けると、心地よい異次元空間が出現。

- Bar Dute (バー デューテ)
- 東京都台東区東浅草2-28-10
- tel.03-3875-9122
- 営:20:00~翌5:00/日曜日20:00~翌1:00
- 休:水曜日
- 交:各線浅草駅徒歩10分
健太さんの実家では、大正15(1926)年に創業した山谷でもっとも老舗の居酒屋「遠州屋本店 高尾」を営んでいます。「現在は兄が店を任されております。山谷らしさの残る大衆的な居酒屋ですので、ぜひ次のお店として紹介させてください」。ありがとうございます、と言いつつ、その足ですぐ近くの「遠州屋本店 高尾」へ行き、おいしく鍋料理をいただいた夜なのでした(笑)。では次回も山谷でお会いしましょう!