
第9回 炭火酔家さと


オープンキッチンで新店スタート!浅草にありそうでない、本格焼鳥のお店。
最近、わかってきたことのひとつに、浅草の飲み屋さんは言間通り(ことといどおり)を挟んで大きくふたつに分かれているということ。
通りの北側が地元の人たちがハシゴするようなエリアで、南側が観光客が立ち寄るような飲食店さんが多いのですね。
今回ご紹介する「さと」さんは、言間通りの北側で開業し、昨年南側へ移転しました。
「お客様のほとんどは地元の人たちですょ」と語るのは、店主の小田井智さん。ご実家の建て直しを機に、建物の1階を新店「さと」にしたのです。
「カミさん(真由実さん)がCADを扱う設計事務所で働いていたこともあり、新店の空間づくりにもいろいろと相談に乗ってもらいました。以前の店はクローズドキッチンだったので、今回はオープンにして、焼き台もど真ん中に配置しました。私のでかい身体が存在感ありすぎという指摘もありますが(笑)」
接客サービスは、真由実さんの担当。元OLとは思えないほど、ゆる~いキャラで、とても癒されます。
「お客さんに『だよね?』とか言っちゃって、よく主人から注意されます(笑)」と真由実さん。いいえ、それでいいんです。それが自然体ですから。
アナログな感じの智さんと、デジタル人間なんだけどあたたかい真由実さん。
そんな個性的なおふたりが営む「さと」さんの、営業開始時間すぐに突入させていただき、さっそく焼鳥をいただくことにしました。


素材、焼き加減、タレ、ご飯ものまで、ひと皿ごとに誠実さタップリ。
そういえば、浅草で焼きトン系のお店や居酒屋さんは多いのですが、焼鳥屋さんはありそうでないというか、なぜか珍しい。私が知らないだけかもしれませんけどね。
パチパチと炭火をおこし、串に刺したばかりの新鮮な焼鳥♪ まずはおまかせ5本でいただきました。
大ぶりのハツは新鮮そのもの、ネギ間のモモ肉は皮目がカリッと香ばしく、中はふんわり♪。おや? はじめて見るような……と思ったのはササミでしたぁ。
このササミ、大つぶなのでパサパサかなぁと思いきや、脂がしっとりときめ細かく入って、とても食べやすい。サプライズな一品です。
つくねとレバーは秘伝のタレで。軽くとろみがついたタレは、肉とよく絡みます。でも味わいは濃厚ではなく、サラッとやさしく素材を引き立ててくれます。レバーは絶品! 今まで苦手だった人でもここのクセのないレバーを試してみれば、食べず嫌いを克服できると思いますョ。
「母親の故郷、青森からは今にんにくが入荷中、カミさんの実家、千葉からは菜の花が入っています。同級生の友だちが営んでいる酒屋では、当店のオリジナルボトルによる芋焼酎をつくってくれたり。多くの人たちに支えられていると、日々実感しています」
地元のファミリーが食事処としても利用しているだけあって、親子丼や鶏ぞうすいなど、ご飯ものも充実しています。
私は、塩ラーメンをいただくことに。透き通った黄金色のスープに選び抜かれた麺、鶏のチャーシューがどんぶりの中でひとつの世界をつくっていました。
エリアを越えて、探せばディープなお店はあちこちにある。それが浅草ではないかと悟った夜でした。

おまかせ5点盛りのハツ・ネギ間・ササミ・つくね・レバー。生ビールはグラスまでキンキンに凍っていました。

〆のおすすめが塩ラーメン。鶏ガラで取ったきれいなスープと鶏チャーシューがよく合う。一滴残らず完食でした!

移転したばかりの店内は、オープンキッチン! ど真ん中に設置した焼き台からおいしそうな煙が舞い上がります。

- 炭火酔家 さと
- 東京都台東区花川戸2-20-2 1F
- tel.03-5828-3104
- 営:ランチ月~金11:30~13:30
ディナー17:30~23:30(L.O.22:30) - 休:日・祝
- 交:各線浅草駅徒歩4分
パッと見はド迫力の店主・小田井さんですが、とても誠実な店主です。以前は企業に属し、焼鳥業態の1から10までを学ばれましたが、現在のように自由と責任の中で、自分のやりたいことができるのが独立の醍醐味だと語ってくれました。「私たちがオススメしたいのは『DORAS(ドラス)』の中森さん。墨田公園沿いにある、とてもディープなバーです。スイミングクラブ時代の友人でもあります」。ご紹介ありがとうございます。それでは次回、「DORAS(ドラス)」さんでお会いしましょう。