
第41回 高太郎


カジュアルだけど、凛としている。大人のための和の名店。
渋谷で大人が飲んで食べて、うん!とうなずける和食のお店って、ありそうで実はあまりないというイメージがあります。
その渋谷に2011年にオープンして以来、すでに予約の取れない店として成長している大人のための店があるのですね。それが渋谷セルリアンタワーの裏手にある「高太郎」です。
北海道のナラ材を贅沢につかったカウンターをメインに、仕切りのない見通しのいい空間。その真ん中に立つ店主、林高太郎さん。
コックコートや白衣などは着ないで、黒いポロシャツスタイル。判断のスピードも速く、シャキッと動く、スマートな店主という印象です。壁には「嵐を呼ぶぜ」の額縁がかかり、割烹にはないカジュアルさを演出しています。
独立を前に、高太郎さんは蔵元めぐりをして、本当に自分が信じられる酒造所を探しに回りました。現在、メニューにあるのは、厳選された9ヶ所の蔵元です。
「3年、5年先でも、この蔵元さんにお世話になっていると思います。私の中では、不動の蔵元さんです」
高太郎さんは、香川県出身。地元で、讃岐バークを生産している同級生から肉を仕入れ「讃岐メンチカツ」をおすすめとしてメニューに載せ、今では名物メニューになっています。
さらに毎日足で踏んで仕込む讃岐スタイルの「うどん」を〆の定番料理とするなど、ふるさとの食文化を大切にしています。


「楽しかった」と言ってもらえるように、自然体のサービスをめざす。
早めの時間帯は3週間先まで予約が取れない「高太郎」。その魅力は、スタッフが連携しながら取り組んでいる「自然体のサービス」にあるといってもいいでしょう。
「スタッフを連れて、蔵元を訪問しています。酒づくりの現場やその地域の風景など、自分の目で見たこと、感じたことをサービスにつなげるようにしています」
常連客には、くだけすぎず新規のお客さんのように接します。
はじめてのお客さんには、常連客のように親しみをもって接します。
お客さんの好みを覚えるのは、スタッフが全員で取り組んでいるサービスの基本。
「さりげない会話の中で、好みが分かったら、それを自分で覚えておいて、後でみんなで共有するようにしています。それをノートに記録したり、パソコンで管理したくなんですね。パソコンみたいな外部記録をサービスに生かそうというのは、自然じゃないと思うんです。自分たちの頭の中にあるから、自然体になれると思うんですよね」
これみよがしな接客をしないのが高太郎さんのポリシーでもあるのですね。
「空気みたいなサービスをめざしているんですよ。空気って、ないと死んじゃうでしょ(笑)。でも、普段は誰もそれを意識しないで空気を吸っている。なくちゃ困るけど、あることを威張ってもいけない。そういうスタンスで、店づくりをこころがけているんです」

トッピングの燻製玉子をくずして、いただきます。ドレッシングもほどよい酸味でお酒のアテにもサイコーでした。

日本酒は、錫(すず)製の酒器で。美しく、温度を保つ機能性も持ち合わせたぐい呑みで一杯やれば、じーんと沁みわたります。

奥の額縁には「嵐を呼ぶぜ」の迫力の文字が。店主の心いきがカジュアル&ストレートに表現されています。

- 高太郎(こうたろう)
- 東京都渋谷区桜丘町28-2 三笠ビル1F
- tel.03-5428-5705
- 営:18:00~翌2:00(L.O.翌1:00)
- 休:日曜日
- 交:各線渋谷駅徒歩5分
つくづくいい店だなぁ~と感じました「高太郎」さん。ストレートのど真ん中という感じです。(←なんのこっちゃ笑)。さて、次のお店として、渋谷のバーをご紹介いただきました。「まだオープンしたばかりのバーで、小羽君というバーテンダーのお店、その名も『バーコバ』さん。いい感じの空気感を放っておりましておすすめします」。ありがとうございます。それでは次回も渋谷でお会いしましょう。