
第43回 BAR Pledge


天然木のあたたかさと洞窟のような深み。ゆったりお酒を愉しめる空間。
都会的な面影と下町っぽい表情が融合する幡ヶ谷。その複合ビルの2階に「バー プレッジ」はありました。ドアを開けると、いきなり居心地のいい空間に包まれます。
3メートル以上もある天井高。アフリカ産ビブンガ材の一枚板でつくったカウンターと、ゆったり座れるソファ。バックバーには大量の木片を組みあげた壁面。木が放つあたたかい感覚に、思わず深呼吸したくなるほど……。
ホテルのラウンジのようでもあり、洞窟の中にいるようでもあり。感じ方は人それぞれでしょうが、ローカウンターに座っただけで、くつろぎながらひとりでお酒を飲みたいと思わせてくれます。ついさっきまでの、首都高や大通りの喧騒がウソのよう。
「ゆっくりとお酒を愉しんでいただきたいと思っています。そういう意味ではオーセンティックなバーといえるかもしれませんね」
金城剛さんは35才。渋谷、笹塚、西新宿のバーで経験を積み、「バー プレッジ」の準備に入りました。
「職人さんが木を組み上げていく作業を拝見したり、クレーンで一枚板のカウンターを搬入していく工程を目の当たりにしながら、早くここに立って仕事がしたいと思いました。さらに、内装が仕上がってくると、今度はここで働くより、ここへ飲みに来たいと思うようになったんです。働く側の人間がそんな贅沢を言っている場合じゃないんですけどね(笑)」
オープンは今年の6月。カクテルのつくり手である金城さんにとって、満足のいく空間が見事に仕上がりました。


人の生涯に関われるバーとして、長くつづけていきたい。
幡ヶ谷という街は下町っぽさが残っていて、仕事帰りに地元の人が立ち寄る居酒屋は多く存在します。
「居酒屋さんは確かに多くありますね。賑やかな空間の中、地元の人たちが集うコミュニティとしての役割も居酒屋にはあると思うんですよね。そして素敵なバーもこの街に何軒もあるんですよ。そうしたバーと連携しあいながら、居酒屋文化とは対象的に、おひとりやおふたりの少人数でお酒を愉しむスタイルも広めていきたいですね。銀座や六本木でバー巡りもいいですが、幡ヶ谷もバー巡りができる街として愉しんでいただけるようになれたら素敵だなぁ、と思っています」
カクテルの王様とも謳われる「マティーニ」をつくっていただきました。
時間をかけて丁寧にステアする金城さん。照明が当たって、ときどきバースプーンが煌めきます。
オリーブは別の器に入れられて登場しました。これが「バー プレッジ」スタイルのマティーニなのですね。
「私もマティーニを飲むのは大好きです。シンプルで奥の深いカクテルだと思います。愉しいときに飲むと甘く感じたり、コンディションのよくないときには苦く感じることもあったり……。シンプルなのに味わいは深い、不思議なカクテルですね」
まだ歴史を刻みはじめたばかりの「バー プレッジ」。
「多くのお客さまと出会いたいですね。さまざまなシーンや人生の節目の中で、いっしょに喜びや、ときには辛いことも分かちあったりしながら、乾杯できるような、生涯に関われるバーでありたいですね」

カクテルの王様「マティーニ」。金城さん自身、飲み手として大好きなカクテルとのこと。オリーブは別の器に盛り付けられていました。

アフリカ産ブビンガ材の一枚板でつくられたローカウンター。ピンスポットが当たって、なんとも落ち着いた大人の席ですね。

幡ヶ谷駅からもすぐ近くの複合ビルの2階。扉の外と内で、日常から心地よい非日常へガラリと世界が変わります。

- BAR Pledge
- 東京都渋谷区幡ヶ谷1-2-8 幡ヶ谷スカイマンション 2F
- tel.03-6300-5045
- 営:19:00~翌3:00(L.O.2:30)
- 休:第3日曜日・月曜日
- 交:京王新線幡ヶ谷駅徒歩1分
前回ご登場いただいた小羽さんといい、今回の金城さんもそうですが、オーナーバーテンダーの方は皆さん言葉の選び方、精度が高く、とても勉強になります。さて次回は、興味深い業態です。「ふたつのカウンターがあり、それぞれ鮨とダイニングバーの機能をもっているのが『鮨とDining Bar しん』さんです。お鮨から創作料理まで、すべておすすめです」。ありがとうございます。とてもユニークな業態ですね! それでは次回、渋谷でお会いしましょう。